新琴似歌舞伎2022~かぶく女衆~

■「新琴似歌舞伎2022 かぶく女衆 白浪五人男」動画配信に向けて

 明治後期、新琴似(札幌市北区)で開拓という重労働の日々、若者たちの娯楽として始まった郷土芸能「新琴似歌舞伎」。北区の貴重な文化として後世に受け継ぐため、「新琴似歌舞伎伝承会」が北区等の支援を受け1996(平成8)年、80年ぶりに復活させました。

 また、2002(平成14)年度より地元札幌市立新琴似中学校の協力を得て、中学生対象の「歌舞伎公開講座」を開催。また、地域の皆さまにも楽しんでいただいてまいりました。

 このような中、2020(令和2)年度より2年間、新型コロナウイルス感染拡大の影響により公開講座はやむなく中止。しかし、コロナ禍の厳しい状況にあっても、地域の皆さまに、「新琴似歌舞伎」伝承に手作りで取り組む姿を知っていただき、次世代につなぐため、伝承会員を中心に女性の役者による公演、動画のネット配信を決定しました。演目は通称「白浪五人男」、かぶく女衆五人が相務めました。また、裏方の太鼓には新琴似中学校のOGが参加し、迫力のある舞台をつくりました。

 役者や黒子をはじめ着付け・化粧担当ほか、スタッフ総勢約30名が力を合わせ、無事収録を行うことができました。

 ぜひ、一人でも多くの皆さまにご覧いただければ幸いです。

■「新琴似歌舞伎伝承会」の活動について

 新琴似に1887(明治20)年屯田兵が入植。開拓の日々労苦の中で、明治末から大正と農村文化のはしりと言われ、郷土の伝統文化であった「新琴似歌舞伎」を後世に受け継ぐため、1993(平成5)年、新琴似連合町内会の役員を中心に「新琴似歌舞伎伝承会」を発足。1996(平成8)年、札幌市北区の物心両面にわたる支援を受け、80年ぶりに復活させることができました。

 2002(平成14)年度より地元札幌市立新琴似中学校の協力を得て、伝承会員の指導・演出による中学生対象の「新琴似歌舞伎公開講座」を開催、継続してきました。

 さらに、2018(平成30)年からは、伝承会員による演出・脚注の歌舞伎(八笑人両国橋番外お化け尽くしほか)にも取り組み、新琴似文化振興会主催の「芸能の集い」等で、地域の皆さまにも大変楽しんで頂いてきました。

 このような中、2020年は、新型コロナ感染拡大により、中学生の歌舞伎公開講座も歌舞伎の新作公演もやむなく中止。しかし、この度の動画配信という新たな取り組みは、舞台稽古の時間も限られる中、皆の力を結集し、今後の活動につながる大きな力となりました。

■「白浪五人男」稲瀬川勢揃いの場 あらすじ

 通称「白浪五人男」と呼ばれる歌舞伎芝居は、河竹黙阿弥の代表作で、中国の後漢書のなか賊の残党で、西河の白浪谷を中心に潜んでいた盗賊の異称と言われた。この泥棒や小悪党を主人公に美化し日本版にしたもの。1862年に初演された。ここで演じる白浪五人男は、日本駄右衛門、弁天小僧菊之助、忠信利平、赤星十三郎、南郷力丸の五人の因果を描いたもの。悪事の計画がばれた盗賊団、白浪五人男は、夜が明けて桜が咲き乱れる稲瀬川の土手まで大勢の捕手にとうとう追い詰められる。やっきになっている捕手をしり目に頭目の日本駄右衛門を筆頭に「志ら浪」と描かれた傘を差しながら登場した五人男は、やがて十手をふりかざす捕手たちに取り囲まれる。結局、物を盗むことなく捕手に追い詰められるがそれにも動ぜず、五人は一人ひとり堂々と名乗りを上げる……。

 見どころは、見事に画かれた着物衣装。傘を持って居並ぶ美しさ、渡りセリフの名調子など、正に歌舞伎の真骨頂です。銘々五人のセリフに面白さがあり堪能いただければ幸いです。